TOP >ドル売り買い交錯、貿易収支は予想よりも強い

<<前の記事

次の記事>>

ドル売り買い交錯、貿易収支は予想よりも強い


5月15日

************忙しい人のためのサマリー*********
米貿易収支の結果は予想よりも赤字額が少なく、ドル買い材料に。

海外時間に入って109円台半ば割れまで値を落としていたドル円は
一時110円台半ば越えまで値を戻す。
しかし、その後失速し、週明けの市場で再び109円台半ばに。

欧州通貨買いドル売りも目立つ。ヘッジファンドなどが積極的に欧州通貨買いドル売りを
行っており、貿易収支でいったん調整も、その後再び流れを取り戻す。
*********************************************

金曜日の市場、
貿易収支というイベントをはさんで
売り買いが大きく交錯する展開となった。

貿易収支が予想よりもかなり強く(赤字が少なく)
ドル買いを誘ったものの
高値では、ヘッジファンドなど海外投資家からのドル売り注文が
活発に入る展開で
売り買いが交錯する流れとなった。

NY時間の昼ごろからは
一時ドル買いが優勢となって
110.50越えのストップを巻き込んで上昇する場面なども見られたが
引けまでにはやや値を戻して
110円近辺で週の取引を終了。
週明けの市場では、ドル売りが優勢になって
朝7時の時点で109.50/60までドル売りとなるなど
売り買いがかなり交錯した状況が続いている。

数字前からドル円以上に目立ったのは
欧州通貨でのドル売り欧州通貨買い。
ドルスイスなどで、ヘッジファンドやオプション勢の
大量のドル売りが見られたほか、
ユーロドルに相変わらず中東勢などからユーロ買いドル売りが入っている。

これら欧州通貨買いドル売りの流れは
貿易収支の好結果を受けて、いったんは調整されたものの
その後再び流れが強まる展開。

週明けの市場でも、この流れは続いており、
ユーロドルが1.2950を越えて一時1.2970越えまで進んでいた。

主要通貨以外では、
新興国通貨の売りが目立ったのも金曜日の特徴。
EURZAR(南アフリカンラント)が7.8台前半から8.1台まで上昇したほか
EURHUF(ハンガリーフォリント)が261台後半から266台半ば越えまで上昇するなど
新興国通貨売りユーロ買いの動きが活発に出ていた。


【東京市場】

朝からドル売りが優勢とは言うものの
NY時間にある程度のドル売りが進んでいたこともあって
その後の動きから比べると落ち着いた動きになった。

NY午後に110円台後半から110円台前半まで値を落としたドル円は
その後東京時間に入っても続くドル全面安の流れに
110円を瞬間割り込むところまでドル売りが進む場面も見られたが
109.90にあると見られたオプションがらみのポイントを崩すことができず
110円台前半に戻される動き。

同じく前日の海外時間ですでのドル売りが進んでいた欧州通貨は
ドル安値圏でのもみあいが続いた。

【ロンドン市場】

ロンドン時間は
ドルが全面安となる展開。
特に欧州通貨に対してはドルが急落する場面などもあり
かなり活発な展開になった。

まず、最初に大きな動きを見せたのがドル円で
東京時間に下値を支えた109.90のポイントを
ヘッジファンドなどからの大口の売りについに崩すと
その後は目立った戻りもなく109円台半ばまで下落。

当初はこの後の貿易収支への警戒もあって
ドル円でのドル売りに同調をそれほど見せなかった欧州通貨は、
前日に引き続いて中東勢から大口のユーロ買いが出ると、
ユーロドルが1.2900を越えて大幅上昇。
ヘッジファンドなどからのポンドやスイスに対するドル売りも加わり
欧州通貨買いが一気に進む展開となった。
特にドルスイスは、1.2000割れにまとまったストップが入っていたこともあり
売りが売りを呼ぶ展開であった。

ユーロは1.2900だけでなく、1.2950越えのストップまでつける荒っぽい展開
ポンドドルも1.9000目前まで上昇、
ドルスイスは1.2100から1.1960/70まで下落と
欧州通貨全体にわたって、ドル売りドル安が進んだ。

すでに売りが進んでいたドル円に関しては
この動きへの同調は限定的であったが
それでも109円30銭近くまでのドル安円高進行を見せた。

もっとも、このパニック的な欧州通貨買いが落ち着いた後は
午後9時半の貿易収支を前にポジション調整が目立つ形に。

ユーロドルは1.2900近くまで値を落とし
ドル円は109.65近辺まで値を戻すという動き。

【NY市場】

午後9時半に発表された注目の米貿易収支(3月)の数字は
予想670億ドル赤字に対して、620億ドルの赤字にとどまる
予想外の赤字幅縮小となった。

この数字を受けて、市場では一気にドル買い戻しの動きが強まり
ドル円は109.65から110円越えまで
ユーロドルは1.2900から1.2870割れまでユーロ売りが進む展開となった。
ロンドン時間で売りが目立ったドルスイスは
1.2070までと、安値から100ポイントも値を戻した形に。

もっとも、貿易収支の中身を見ると
中国に対する赤字額(対中貿易赤字)が155.7億ドルと
12.5%も拡大しており、人民元への圧力という意味での懸念は強まる形。
このことを嫌気して、ドル買いが一服
ナイジェリアの石油施設への爆破テロ報道を受けて原油が買われたこともあって
ドルは、貿易収支発表前の水準まで値を戻す展開となった。

その後午後11時に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数(ミシガンセンチメント)が
予想を下回ったことでドルはやや軟調になったものの
ドル円の109円台前半やユーロの1.29台前半からのドル売りに慎重な姿勢が見られたことから
再びドル買いが優勢になる
方向感の良くわからない展開。

週末を前に、先週一週間のドル安ムードで摘みあがったドル売りポジションを
ある程度整理しようというドル買いや
オプションがらみのドル買いなどがドルを支え
ヘッジファンドなどからのドル売りが頭を抑えるという展開。

ドル円は109.50-110.10のレンジで激しい振幅を繰り返した後
ドル買いが優勢になって
110.50越えまで果たす流れ。
ドル円以外の通貨ペアでは、ここまで派手なドル買いにはならなかったが
ユーロドルも1.28台後半での動きと
全般的にややドル堅調。

しかし、そのままでは終わらず
NY引け間際には再びドル売りが優勢に。
110円50銭を越えてドル買いに一服感が出たドル円に
短期筋からの売りなどが入って110.00近くまで売り込まれ
ユーロドルも1.2900近くまで値を戻しと
一日のレンジの中ほどまで値を戻す形で
週の取引を終えた。

週明けになると、
今度は早朝からドル売りが優勢に。
海外勢から活発なドル売りが持ち込まれているといわれ
ドル円が109.50割れ、ユーロドルが1.29半ば越えという展開。

【ここからの見通し】

貿易収支の数字が
予想よりも強かったことは
素直に好感できる結果。

米金利の打ち留め感の強まりとともに
市場のテーマが金利差一辺倒から
ほかのテーマもにらんだものに変わりつつある中
金利に告ぐテーマとして注目される米経常赤字の拡大という懸念が
一息ついた形である。

もっとも、予想を下回ったとはいえ
昨年などの状況から比べて大きな赤字を計上していることに違いはなく、
いまだ予断を許さない。
そうした中で
貿易収支の赤字分をカバーできるだけの
海外からの資金の流入があるのかどうかを見極めるためにも
今日の対米証券投資の数字の注目度が高い。

市場の予想は800億ドル前後と
前回の869億ドルから減少するという見方。
予想をさらに下回って減少が進むようだと、
ドル売りの流れに拍車がかかるか。

また、指標の結果を除いても
ドルの地合いの弱さは気になるところ。
先週火曜日時点のIMM通貨先物ポジションで
円の買いこし(ドル売り円買い)が14ヶ月ぶりの高水準となっているところなどを見ても
ヘッジファンドなどのドル売り円買い志向の強さが感じられる。

大方の社内レートを下回ってきた状況で
本邦輸出勢が如何出てくるのかなども見もので、
面白い展開が続きそうだ。

注文的には
ドル円の109円台前半には買いが残っているようだが
割り込むとストップも。
上値は、今朝の下げで遠くなってしまったが
111円に大口の売りの噂がある。

ユーロは、心理的にも、オプションなどの取引がらみでも
重要なポイントとなる1.3000の水準が近づいてきている。
このポイントを如何にこなすか(もしくは跳ね返されるのか)が
今後の大きな焦点か。

 

■為替ニュース配信サイト「Klugクルーク」




山岡和雅
やまおかかずまさ

1992年チェースマンハッタン銀行入行
1994年ロイヤルバンクオブスコットランド銀行
(旧ナショナルウェストミンスター銀行)移籍
10年以上インターバンクディーラーとして活躍した後GCIグループに参画。
2005年9月よりGCIキャピタル・シニアアナリスト
(社)日本証券アナリスト協会検定会員
主な著書として「外為投資ネットでらくらく儲かる方法」(すばる舎)